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あのことききたいたしかめたい

偽装するラブホテル

2008年12月22日

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秋田市の住宅街。小学校の通学路沿いに茶色いホテルが建っている。「休憩5500円」と書かれた電光掲示板の脇を通って中に入ると、フロントに人影はない。モニターが空き室の写真と値段を表示している。希望の部屋のボタンを押すと、部屋のカギが自動的に開く仕組みだ。部屋には大きなダブルベッドと薄型液晶テレビもあるが、窓はない。精算を部屋で済ますと、誰にも会わずにホテルを出ることができる。

「あれはラブホテルですよね。通学路にはない方がいい。ただ許可を取っている以上、営業停止を求めるわけにもいかないですし……」。ホテルから300メートルのところにある小学校の校長は言葉を濁す。しかしこのホテルは、ラブホテルではなくビジネスホテルとして保健所から旅館業法の認可を受けているのだ。

ラブホテルは風俗営業適正化法(風営法)で規制されている。旅館業法とは別に公安委員会への届け出が必要だ。84年の改正以降、建設は商業地など一部の地域に限られ、住宅地や学校の周囲200メートル以内で営業することはできなくなった。

ただ、風営法が定めるラブホテルとは「回転ベッドがある」「性用品の自動販売機がある」「1平方メートル以上の鏡がある」など。こうした設備を置かず旅館業法の許可だけで営業する偽装(類似)ラブホテルが全国的に増加している。偽装ラブホテルを運営する県内の会社は「法改正でラブホテルの新規出店は難しくなった。需要はあるのだから、ビジネスホテルとして許可を取り経営している。法律違反ではない」と説明する。

警察は法律上の問題はないとして、偽装ではなく類似ラブホテルと呼んでいる。警察庁が今春まとめた調査では、派手な外観や料金の看板などから類似ラブホテルと判断したホテルは全国で3593軒で、ラブホテル3963軒に迫る数だ。県内では、それぞれ45軒と34軒で類似ラブホテルのほうが多い。

県警生活環境課によると、改正風営法が施行された85年を最後に、ラブホテルの届け出は一件もない。つまり、それ以降にできたラブホテルはすべて、風営法の定義を外した偽装ラブホテルといえる。

風営法の規制を受けないため、学校の近くに偽装ラブホテルを建設することも可能だ。秋田でも数年前、旧大曲市で、ラブホテル建設をめぐり、反対運動が起きた。住民側の関係者によると、業者は宿泊型ログハウスだと主張したが、車でコテージに乗り付け、そのまま泊まることができた。住民は計画撤回を求めて1万人の署名を集め、ホテルは建設中止になった。

なぜこんな事態が起きるのか。今年3月、神戸市で設立された「全国偽装ラブホテルをなくす会」の馬場敦子代表は「本来なら偽装ラブホテルを取り締まる旅館業法や風営法が機能していない」と話す。

秋田市保健所によると旅館業法はもともと、旅館やホテルの部屋の数や広さなど建物設備や衛生面をチェックするものだ。「基準を満たしていれば、(偽装ラブホテルだろうと)許可を出すしかない」と説明する。県警生活環境課も「旅館業法の許可を取り、ビジネスホテルや旅館として営業している以上、警察が取り締まることはできない。規制は行政の仕事」という。

こうした法律のすきまをぬって、偽装ラブホテルは次々と建設されている。

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